弃安 Kian

 



1. 響 (ひびき) [SOUND]

Q:2025 年、世界のノイズに塗りつぶされることなく、心に深く、静かに突き刺さった「音」。

A:昨年はあまり音楽をたくさん聴いたわけではないのですが、新作の中で長い時間繰り返し聴いた一枚は、Bon Iverの『SABLE, fABLE』でした。

哀しみを生み出すような音楽を作っていた彼が、少しずつここまで柔らかく、明るい表現へと変化してきたことを感じられ、聴いていてとても励まされました。

旧作の中で挙げるなら、Carlos Aguirreの『Rojo』と、Yellow Swansの『Going Places』。2枚ともタイプは全く違いますが、それぞれ異なる美しさがあります。



2. 景 (ひかり) [MOMENT]

Q:誰かと、あるいは自分自身と「繋がった」と感じた 2025 年のライブ光景。

A:一度は観客として、そしてもう一度はその場に参加する形で体験した、「壞小鳥」のパフォーマンスですね。なんと真摯で、強烈な感情、そしてなんと勇敢な表現でしょうか。

以前、彼らの編成や、いくつかのメロディーをチェックした時は、中国版「Zayaendo」のような存在なのかと思っていました。けれど実際には、あの柔らかさとは異なっていた。

彼らの表現は、優しく侵食していくようなもの――溢れ出る愛によって、空間全体を引き裂くと同時に満たしていきます。




3. 航 (わたる) [FICTION]

Q:年間を通して、創作の糧、あるいはメンタリティ座標となった作品。

A:MVでもいいですか? それならJohn WilsonがBon Iverの「Everything Is Peaceful Love」のために手がけたMV。わずか3分半ほどの映像なのに、初めて観たときは涙が止まりませんでした……。





4. 触 (ふれる) [MATTER]

Q:制作や日常生活に温かさを与えてくれて、身体の一部のように馴染んだ「モノ」。

A:テルミンですね。

今年になって、ようやく自由自在に演奏できるレベルに達しました。もともとこの楽器は身体との結びつきがとても強く、姿勢、手の動き、筋肉のコントロール……そうした要素すべてが関わってきます。この問いへの答えとして、とてもふさわしいと思います。




5. 律 (リズム) [CONTINUITY]

Q:激しく動く時代の中で、変えずに続けてきた「自分だけの儀式」。

Aひとりで演奏することと、散歩。








一年の余韻を胸に、私たちは2025年の足跡を振り返ります。本プロジェクト『Traces』には、国境や言語を越え、アジアを横断する音楽家とその歩みを支える共鳴者たち、総勢30名超が集結しました。

5つの漢字に託された、私たちが大切にしてきたもの。
個々の記憶に深く宿るぬくもりをアーカイブし、リスナーや読者へと届けていく。

The Artists:
、景、航、触、律」

The Pro-Voices:
「兆、韻、拓、伴、芯」

正解のない、不安な時代だからこそ。
この言葉たちが、小さくともしなやかな「可能性」の種となることを願って。
分断を越え、新しい時代の「輪郭」を、共に手繰り寄せるように。


Curation:Zing
Edit:neciak
Design:10000





弃安 Kian
別名zuho。サウンドデザイン専攻出身でありながら、現在はインディー劇伴作家、音楽プロデューサー、マルチ・インストゥルメンタリスト、そしてテルミン奏者として活動する。音楽創作者としての生活はすでに10年以上。これまで多くのインディー・アニメや映画の音楽を手がけ、時には演奏者として、ジャズからアンダーグラウンドの即興ノイズまで、様々なシーンに参加。

現在は、多くの楽器と一匹の猫とともに、大きな窓に面した部屋で暮らしている。家でゆっくりと休符を奏でるのを好む。

2020年にリリースしたアルバム『zuho - sharp, sharp』は、シンガポールの第14回Freshmusic Awards にて年間ベストアルバム賞および年間ベストシングル賞のダブルノミネート。2025年には同賞最終審査員も務めた。



textur3   2024-2026