Knopha

 




1. 響 (ひびき) [SOUND]

Q:2025 年、世界のノイズに塗りつぶされることなく、心に深く、静かに突き刺さった「音」。

A:昨年、最も衝撃を受けたのは、Pino Palladino & Blake Mills のアルバム『That Wasn’t A Dream』。メロディ、拍子、演奏のすべてにおいて、感情と温度が満ちている作品でした。

もう一つは、Roméo Poirier の『Off The Record』。コラージュ(アート)音楽を新たな高みに引き上げた作品です。タイトルが示す通り、Roméo はスタジオスタッフの指示やミュージシャン同士の雑談、マイクチェック、「NG、もう一度」といった、通常は“最終完成版”には収められない素材を再構成し、独自の物語性を与えています。



2. 景 (ひかり) [MOMENT]

Q:誰かと、あるいは自分自身と「繋がった」と感じた 2025 年のライブ光景。

A:最も印象深かったのは、FFKT 音楽祭での Fabiano Do Nascimento の朝 8 時 30 分の演奏。私も早起きした観客たちと同じように、彼の軽やかなプレイに引き込まれました。

演奏がどれほど美しかったかはさておき、その場にあったすべてが作為的ではなく、ごく自然に感じられたことが何より印象的でした。まるで、たまたまギターを手にした一人の人間が、まばらな人々の前で弾いている、あるいは独りで練習しているような感じでした。途中で手を止めてギターをチューニングし、いくつかのフレーズを試し、それをルーパーで循環させてから、再び即興へ。音量はとても小さく、アンプを通してほんのわずかに音が増幅されている程度でした。



3. 航 (わたる) [FICTION]

Q:年間を通して、創作の糧、あるいはメンタリティ座標となった作品。

A:セリーヌ・ソン監督の映画『マテリアリスト 結婚の条件』は、私にとって大きな示唆を与えてくれた作品でした。

この作品が特別に好きだというわけではありません。むしろ、これほどまでにオーソドックスなロマンティック・コメディが、繊細なシネマトグラフィーと没入感のある丁寧な音楽によって、いくつかの場面で新鮮なロマンティックな空気を立ち上げていることに驚かされました。

優れたプロダクションは、シンプルなアイデアであっても確かに昇華させる力を持っている。創作においては、独自性のある部分がきちんと引き出され、提示されていれば、それだけで一つの成功と言えるのではないでしょうか。毎回すべてを完璧にしようとする必要はないと思います。



4. 触 (ふれる) [MATTER]

Q:制作や日常生活に温かさを与えてくれて、身体の一部のように馴染んだ「モノ」。

A:昨年新しく購入した Torso S4 サンプラーがお気に入り。インターフェースが直感的で一目瞭然、とても使いやすいです。現代の楽器はすべてこうあってほしいと思うほどです。そして自分自身、これほど高い頻度でハードウェアを制作に取り入れたことはこれまでありませんでした。



5. 律 (リズム) [CONTINUITY]

Q:激しく動く時代の中で、変えずに続けてきた「自分だけの儀式」。

A:厦門(アモイ)に戻って数日ゆっくり過ごすことですね。以前そこに住んでいた頃も、実家に帰るたびにそう感じていたし、今上海に引っ越してからも、定期的に厦門へ戻る時間を大切にしたいと思っています。あの場所では「家族たち」とゆっくり話すことができるし、たとえただ穏やかで心地よい気候を感じるだけでも、それだけで十分に満たされた気持ちになれます。









一年の余韻を胸に、私たちは2025年の足跡を振り返ります。本プロジェクト『Traces』には、国境や言語を越え、アジアを横断する音楽家とその歩みを支える共鳴者たち、総勢30名超が集結しました。

5つの漢字に託された、私たちが大切にしてきたもの。
個々の記憶に深く宿るぬくもりをアーカイブし、リスナーや読者へと届けていく。

The Artists:
「響、景、航、触、律」

The Pro-Voices:
「兆、韻、拓、伴、芯」

正解のない、不安な時代だからこそ。
この言葉たちが、小さくともしなやかな「可能性」の種となることを願って。
分断を越え、新しい時代の「輪郭」を、共に手繰り寄せるように。



Curation:Zing
Edit:neciak
Design:10000





Knopha(ノーファ)

上海を拠点に活動する DJ、音楽プロデューサー、サウンドデザイナー。

中国のアンダーグラウンド・クラブシーンの重要人物であり、オンライン音楽プラットフォーム「百会 (Baihui)」や、上海の独立音楽祭「OUHE」の共同創設者の一人。アンビエントやレフトフィールド・エレクトロニックを軸にした独自の音楽観とジャンルを横断するプレイスタイルは、アジアの音楽コミュニティで欠かせない存在となっている。

これまでに Rinse FM、NTS、FBi Radio などの主要プラットフォームにミックスを提供し、Ben UFO、Peach、Ciel ら名だたる DJ からも高く評価されている。フェスティバルでは、タイの Wonderfruit、韓国の Rainbow Disco Club、日本の FFKT等に出演。

作品面では、上海の Eating Music から発表したデビューEP『Nothing Nil』のヒットを皮切りに、カナダの Mood Hut、イギリスの Pressure Dome、日本の Mule Musiqといった国際的レーベルからリリース。また、藤井 風のシングル「きらり」の公式リミックスを手掛けたことでも知られている。



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