阿岭 neciak



1. 兆 (きざし) [INSIGHT]

Q:「何かが変わる、新しい何かが始まる」を覚えた瞬間、ムーブメント、あるいは音楽作品。

A:外国人ミュージシャンやオーガナイザーとの何度かの会話を通じて気づいたのは、「新しさ」ではなく、その場所でしか成り立たない「再現不可能性」です。

たとえば、北京の実験音楽のあり方は他のどの都市とも似ていないですし、上海のシーンもまた、どこか別の場所でそのまま再現できるものではありません。特定の状況や歴史、空気感の中からこそ、特定のアヴァンギャルドが生まれるのだと思います。

そこには「他の人が自分がやっても同じことができる」という発想もなければ、「過去に行われたことを繰り返す」という心配もありません。場所と時間に強く結びついた、その瞬間にしか立ち上がらない表現があるのだと思います。

まるで、北京のような実験音楽が生まれる場所は他にないように、また、上海のような場所も他にないように、特定の情景が特定のアヴァンギャルドを生み出すのであり、「俺が出ても同じようにできる」とか「自分自身を繰り返す」ということは、そもそも存在しないのです。




2. 韻 (のこる) [ENERGY]

Q:熱量だったり一体感などに、心底圧倒された 2025 年の現場光景。

A:北京での夏の大△

その前日は大城真と川口貴大の極度に堆積されたレイヤーを観て、翌日は念願かなって△のセッティングを目にした。

何かに対して異議を唱えているわけでもなく、単に新奇さを追い求めているわけでもなく、それはいわゆるサウンドアートでもなければ、サウンドインスタレーションでもありません。

必然的に失敗するであろう何かが、一定の時間の中に置かれ、ほとんど興醒めなほどに、既定の概念を破壊していくのでした。





3. 拓 (ひらく) [PERSPECTIVE]

Q:年間を通して出会ったあらゆる表現の中で、視野を広げてくれたり、良き刺激もらったもの。

A:倉垣卓麿(Takuma Kuragaki)の「cleave」:故障と空白を別の方法で捉え、予測不可能な不安と、信じることの崩壊を描いています。これは、従来のような注意の掌握とは一線を画したものです。

もう一つはジュリア・エックハルトがエリアーヌ・ラディーグについて書いた『Intermediary Spaces(中間の空間)』。







4. 伴 (あいぼ) [TOOL]

Q:ハードな現場、日常、執筆など支えてくれたり、「一緒に戦ったな」と思う2025年の「相棒」。

A:Outdoor Boys チャンネル;
『Hollow Knight: Silksong』




5. 芯 (どだい) [CONTINUITY]

Q:時代の激流の中で、これだけは守り抜いた「自分なりのルーティン」。

A:レコードを買うこと。
予算が少なければ、レコードを買う数を減らして、その分CDやカセットテープ購入に回しています。








一年の余韻を胸に、私たちは2025年の足跡を振り返ります。本プロジェクト『Traces』には、国境や言語を越え、アジアを横断する音楽家とその歩みを支える共鳴者たち、総勢30名超が集結しました。

5つの漢字に託された、私たちが大切にしてきたもの。
個々の記憶に深く宿るぬくもりをアーカイブし、リスナーや読者へと届けていく。

The Artists:
、景、航、触、律」

The Pro-Voices:
「兆、韻、拓、伴、芯」

正解のない、不安な時代だからこそ。
この言葉たちが、小さくともしなやかな「可能性」の種となることを願って。
分断を越え、新しい時代の「輪郭」を、共に手繰り寄せるように。


Curation:Zing
Edit:neciak
Design:10000





阿岭 neciak

textur3 クルーメンバー。
その傍らで、個人としてもイベントシリーズ「回南 fit none」を主宰し、マイクロレーベル「Nestled」を運営。




textur3   2024-2026