<interview>
textur3 features vol. 4|照井順政
textur3 features vol. 4|照井順政
卓越したギタリストであり、近年では『呪術廻戦』や『機動戦士ガンダム GQuuuuuuX』といった作品で、物語の深淵を掬い上げるような劇伴を綴る照井順政。ジャンルを軽やかに横断し、変幻自在に音像を操るその筆致は、これまでに歩んできた重層的なキャリアに裏打ちされている。それと同時に、彼の表現の根底には、日々の生活で抱く違和感やふとした問題意識を、純度の高い創作の燃料へと変えていく、真摯な眼差しが常に注がれている。
2004年、ロック・バンド「ハイスイノナサ」を始動。幾何学的な美しさと鋭い切れ味を湛えたアンサンブルは、当時のオルタナティブ・シーンに鮮烈な美学を提示した。2015年からはアイドルユニット「sora tob sakana」をプロデュース。マスロックの意匠をポップスへと鮮やかに昇華させた独創的な世界観は、メジャーの華やかさと実験的な鋭さを共存させ、当時のシーンに一際まばゆい光を投げかけた。そして2016年、盟友・蓮尾理之と共に「siraph」を結成。「バンド」という有機的な形体のなかで、彼は今、よりのびやかに音を紡いでいる。
自らに厳格さを課し、ストイックな表現を追求し続けてきた。一方で、多くの人々との邂逅を伴うプロジェクトを経て、彼は「自分ひとりでは辿り着けない場所にある面白さ」を見出し、思い通りにならないプロセスさえも糧にするような、開放的な境地へと辿り着く。
2026年春、私たちはメールを通じて照井氏との対話を行った。キャリアの変遷から、都市生活が創作に与える影響、そして長期マラソンのような制作を支える日々のルーティンに至るまで。静かに、しかし確かな体温を持って響き続ける彼の思考の手触りを、textur3 はそっと確かめてみた。
(2026年3月 実施 / 2026年5月 公開)
2004年、ロック・バンド「ハイスイノナサ」を始動。幾何学的な美しさと鋭い切れ味を湛えたアンサンブルは、当時のオルタナティブ・シーンに鮮烈な美学を提示した。2015年からはアイドルユニット「sora tob sakana」をプロデュース。マスロックの意匠をポップスへと鮮やかに昇華させた独創的な世界観は、メジャーの華やかさと実験的な鋭さを共存させ、当時のシーンに一際まばゆい光を投げかけた。そして2016年、盟友・蓮尾理之と共に「siraph」を結成。「バンド」という有機的な形体のなかで、彼は今、よりのびやかに音を紡いでいる。
自らに厳格さを課し、ストイックな表現を追求し続けてきた。一方で、多くの人々との邂逅を伴うプロジェクトを経て、彼は「自分ひとりでは辿り着けない場所にある面白さ」を見出し、思い通りにならないプロセスさえも糧にするような、開放的な境地へと辿り着く。
2026年春、私たちはメールを通じて照井氏との対話を行った。キャリアの変遷から、都市生活が創作に与える影響、そして長期マラソンのような制作を支える日々のルーティンに至るまで。静かに、しかし確かな体温を持って響き続ける彼の思考の手触りを、textur3 はそっと確かめてみた。
(2026年3月 実施 / 2026年5月 公開)
音楽からインスピレーションを受けるのではなく、生きていて感じるすべてのものを、音楽で表現したい。
textur3: まずは照井さん、どのような場所で育たれたのか、差し支えない範囲で、簡単に教えて頂けるとうれしいです。またティーン時代を振り返る時、特に心に残っている風景や記憶はあったりしますか?
照井順政: 出身は北海道です。
幼稚園の卒園まで北海道で生活をして、小学校に上がるタイミングで神奈川に引っ越しました。神奈川県の川崎市で10代を過ごしたのですが、多摩川という川を渡ればすぐに東京という県境のあたりに住んでいて、都市の文化も享受していたと思います。
textur3: ご家族の方々は音楽がお好きでしたか?照井さんが「音楽」を意識した最初の記憶について教えてください。
照井順政: 家族は特別音楽を好んでいたということはなく、人並みだったと思います。5つ上の姉、4つ上の兄がいるので、僕自身は同年代の友人より少し上の年代の曲がなんとなく耳に入っていたことが多いと思います。
照井順政: 兄弟だから、ということはそこまでなかったように思います。
音楽的な意見の相違というのもそこまでなかったかなと。というのも、僕はかなり自分の好みが強めにあり、その美意識を前面に出していましたが、兄はもっと職人肌で、自分の好みを強く出すというよりも(もちろんあったとは思いますが)出てきたものに対してベストを尽くすという感じのスタンスだったので、あまりぶつかったりはしなかったです。
違いを感じる点も上記の通りで、自分はどちらかと言えばアーティスト方面、兄はミュージシャン方面という感じだと思います。
textur3: 最初に手にした楽器はギターだったのでしょうか。ギターを始めたきっかけと、初めて手に入れたギター(アコギ・エレキそれぞれ)のモデル、それを選んだ理由を教えてください。ご自身の意志で初めて購入したギターは何だったでしょうか?
照井順政: 学校で触った楽器などを除けば、親が兄弟三人に買い与えてくれたガットギターが最初の楽器でした。そのギターに関しては親が選んだもの(父親は以前趣味でクラシックギターを演奏していたとのことでした)だったので選定理由は分かりませんが、YAMAHAのものだったと思います。
自分のお金を使って買った初めての楽器はLEGENDというメーカーの黒いレスポールカスタムモデルの初心者セットでした。理由は値段の安さ、あとはザックワイルドが好きだったのと黒のレスポールカスタムのルックスに惹かれたからです。
ハイスイノナサ Haisuinonasa
textur3: ハイスイノナサの前身となったコピーバンドが、照井さんにとって初のバンドだったのですか?当時はどのようなバンドだったり、アーティストをコピーしていたのでしょうか?
照井順政: 中学校時代に周りの友達と好きな曲をコピーしていたのでが最初のバンド体験です。
一番最初はMr.BIGやDream Theater、Extreamなど、HR/HMのコピーをすることが多かったです。
高校に進学してからReadioheadやNirvana、Red Hot Chili Peppersなどと出会い、その方面にハマっていった感じです。
textur3: 以前のインタビューで Limp Bizkit や Red Hot Chili Peppers、Rage Against the Machine などに
触れられていましたが、いずれもハイスイノナサのスタイルとは距離があるように感じます。
どのような影響を経て、ハイスイノナサの音楽性に辿り着いたのでしょうか。
照井順政: 高校の時にRed Hot Chili Peppersのコピーバンドを始めて、そこからの流れでラップスタイルのバンドを掘っていくようになりRage Against the Machine やLimp Bizkit、incubas、311などにもハマりました。ミクスチャーのバンドって歌のメロディが少ない分、バンドのアンサンブル、各楽器のフレーズが面白かったりでバンドでプレイするのもすごく楽しいんですよね。
あとはメロディックさや終始感のあるコード進行という分かりやすさに甘んじず、グルーブや構築美、アンサンブルの妙などで構成される楽曲がクールだなと思っていました。なのでメロディックなLinkin Parkなどが登場してきたタイミングで自分はあまりそのシーンを追わなくなっていきました。
textur3: いわゆる「残響系」から受けた影響は大きかったものですか?また、ご自身がその中の一人として活動してみて、当時のシーンをどういうふうに捉え、また今日の日本音楽シーンにどのような影響を残したか、教えてください。
照井順政:「残響系」から受けた影響はほとんどないと思います。個々のバンドで好きなバンドはありますが、自分の影響元はもっと別の場所にありました。しかし当時のシーンに与えた影響は相当大きなものだったと感じます。
ハイスイノナサの様なバンドがrock in japanに行く様な層に結構聴かれていたわけですから…そういった点はとてもありがたかったしレーベルには感謝しています。
照井順政: 最も影響を受けた建築家はSANAAのお二人だと思います。他にもレンゾ・ピアノ、ヘルツォーク&ド・ムーロン、デビッド・アジャイ、ザハ・ハディド、石上純也…等々。
また建築家という括りではないと思いますが吉岡徳仁氏にも影響を受けたと思います。
創作の遍歴を建築様式で…難しいですが、分かりやすくいうならハイスイノナサ初期は要素を絞ったミニマリズムから始まり、その後徐々に装飾や、曲を構成する本質的な要素から外れた無駄な部分などを増やしてきたという感じでしょうか。
照井順政: 意識的にそうしようと考えているわけではないですが、普通に暮らしていると抱えてしまう問題意識を創作の燃料にしているという感じでしょうか。本当に日々の些細なことから、世界規模の問題まで、自分の視点から感じるものを表明したくなってしまう性分があります。
東京の都市生活からの影響はものすごくあると思います。
ただsora tob sakana以降劇伴の制作が増えてきて、その影響を意識する場面はかなり減りました。
またアーティスト活動が増えてきたら、改めて感じることが多くなりそうです。
sora tob sakana
textur3:2014年頃から sora tob sakana のプロデュースを始められたんですね。このプロジェクトを引き受けた決め手は何だったのでしょうか。
照井順政:当時はハイスイノナサというかなり偏ったバンドだけが自分の音楽の創作の場だったので、そこでは表現できないけど、やってみたい音楽を作ってみれる場所を欲していたんです。
なので正直そういうことができる場であれば当時はなんでも良かったんです。
textur3:オーディエンスの方々が、照井さんの楽曲を初めて聴いた時、どのような反応をされていたか、覚えていたりしますか?
照井順政:戸惑いは感じましたね(笑)
ただ既存のユニットのファンは戸惑いつつも、結局演者が好きなので前向きに対応しようとしてくれていた方が多かった印象でしたし、全く違う領域の方達が反応してくれて、さまざまな方面に波及してくれたのが嬉しかったです。
照井順政: プレイヤーと音楽プロデューサーとしての違いというより、どんな内容の表現がそのグループにとって必然性を持つのかが全く違っていましたので、それを実現するためのプロセスも違ったという感じです。
分かりやすいところで言えば、ハイスイノナサは表現したいイメージのためならアウトプットが前衛的になっても全く気に留めませんでしたが、sora tob sakanaの場合はメンバーの個性なども鑑みて、あまりに尖ったものは総合的に良くならないだろうとか。
あとは自分の人生は自分で責任を取るからなんでもいいやと思っていましたが、10代の女の子の人生を一部分でも預かるとなると、その時の活動だけでなく、その後の人生においてもポジティブな意味を持つ活動・表現をしたいなと思っていたりなどですかね。
textur3: オサカナの活動は6年間に及びました。メンバーの卒業や加入、そして何より、彼女たちが多感な思春期を経て成長していく姿を間近で見守り続けてきたことは、照井さんにとってどのような体験でしたか?その経験は、現在のアーティストとしての“照井順政”に、どのような影響を刻んでいると思われますか?
照井順政: 本当に得難い感動的な体験だったと思います。
世界は自分がコントロールできないことばかりなこと、不自由であること、それが本当に素敵だということを何度も思い出させてくれました。
あとは単純に世代の違う良い友達ができて嬉しいですね、なかなかないことだと思いますので。
どのような影響があるかというと…表現において許せることが格段に増えました。
sora tob sakanaを始めるまでの自分は、自分の制作に対して異常に厳しくジャッジしていて、例えば強烈な理由のない安易なエイトビートは決して使ってはいけないなど「これは自分の中でダサい」というものがやたらと多く、それは絶対にやらないという意識が強かったです。
sora tob sakanaも最初のうちは似たような気持ちで始めましたが、関わる人が多くなった上に予算も全然ない小さな事務所のアイドルだったので、自分の思い通りにならないことが多すぎて…最初は妥協だなぁと思った部分もありましたが、そういう過程の中で自分だけでは辿り着けないような面白いものがたくさん作れたりもして、視野が広がったと思います。
Siraph 2026
siraph
textur3:siraph を始動させた際、「これまでのアイデアを調整・修正したい」というような感覚はありましたか?ハイスイノナサ時期と比べて、あえて「残したもの」と「削ぎ落としたもの」を教えてください。
照井順政:siraphはあまり肩肘張らずにバンドを楽しもうという感じでした。
それは今でも変わりません。
ハイスイノナサの時は自分が表現の0~1の部分のほとんどを担っていて、自分がまず発信しないと本質的には物事が動かない状態だったので、気負っていた部分がかなりあったと思います。
siraphはソングライターも蓮尾くんと二人でやる感じだったし、1プレイヤーとしてのびのびバンドをやりたいという意識です。
制作の具体的な内容でいえばsiraphも初期はハイスイノナサ的な音楽作りを引き摺っていて、前衛的なものや限界に挑戦するような内容のものをやりたいと思っていたりしたのですが、メンバーのポテンシャルを活かすにはそっちの方面は違うと思い削ぎ落としていきました。
意識的に「残したもの」というのはあまり思いつかないですね。
照井順政:意識的です。
先ほどの回答でも触れましたが、siraphはハイスイノナサでできなかったことをやりたいと思う気持ちはあったものの、それまでに経験したオリジナル曲を作っていたバンドはハイスイノナサだけだったので、siraph初期はその時の感覚を持ち込んでいたところがあり、そしてそれはsiraphにはあまり合っていないのではないかと思うようになったので、歌声の扱いも含め、メンバーの特性をもっと活かしたいと徐々に思っていった感じです。
textur3:様々なプロジェクトで女性ボーカルを起用されていますが、声のコントロール能力や表現の幅に関して、Annabelさんはより長けていると感じています。彼女のその表現力をあえて強調したりするようなアプローチは楽曲制作時に意識されていますか?
照井順政:基本的にはいつでもシンガーの方の魅力が引き出せるようにしたいとは思っているので、Annabelさんだから特別どうするというわけではなく、歌声の魅力が引き出せるように努めているという感じです。
textur3:以前「リスナーさんに対する間口を広げるようなことをやっていけたら」と仰っていましたね。その後、手応えはいかがでしょうか。またsiraph は今後どのような方向へ向かっていくのか、教えていただければと。
照井順政:まだそこまで実感はありませんが、広げていきたい気持ちは変わっていないです。
siraphは今後、作曲面は蓮尾くんに主に担ってもらいたいと自分は考えています。
繰り返しになりますが、自分がやりたいことを素直にやろうとすると、siraphというバンドのメンバーの魅力を引き出しきれないような感覚があります。
一方蓮尾くんのやりたいこととsiraphに合う音楽性は一致していると思います。
そういったこともあり、今後作曲に関しては蓮尾くん中心に、自分はアレンジやギタープレイの面に今まで以上に力を注ぎたいと考えています。
textur3: 『呪術廻戦』と『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』、どちらも共作からスタートされていますが、それぞれの制作プロセスやコラボレーションの形にはどのような違いがありましたか?
照井順政: まず呪術廻戦1期と0に関しては3人作家体制で臨んだのですが、それはアニメ側が用意した座組でした。
対してジークアクスの方は、最初は僕に単独で指名があり、スケジュールの関係で一人で担当するのが難しそうだったので、僕の方で信頼できる音楽家の蓮尾くんに協力してもらう形で構わないかとアニメ側に打診した形になります。
蓮尾くんは勝手知ったる仲だったので、担当する曲の振り分けなども含め密に話し合いながら、デモもお互いに相談しつつ進めましたが、呪術廻戦の時にご一緒した堤さんと桶狭間さんとは当時は面識がなく、お仕事で初めてお会いする形だったののもあり、基本的には振り分けられた楽曲をそれぞれが進めていくという形でした。もちろん共有されたデモは聴かせていただいて、参考にしつつ制作していきました。
textur3: 照井さんの書かれる劇伴には、得意とされるギターフレーズや変拍子以外にも、非常に前衛的で非伝統的なアプローチが随所に見られます。ミニマリズム、アンビエント、実験的なエレクトロニカ、あるいはインダストリアルといったジャンルには、もともとどのようなきっかけで触れられてきたのでしょうか?
照井順政: 音楽のどこに魅力を感じるかは人それぞれだと思いますが、自分の場合は音楽のクリエイティブな側面であったり、聴いたことのないような未知の音からくるワクワクだったりというものに比重が置かれがちで、そのような音楽を掘り下げていくうちに自然とそのようなジャンルの音にも触れるようになりました。
また、自分のバンドで音楽を作るときに意識していたのは、音楽からインスピレーションを受けて音楽を作るのではなく、生きていて感じるすべてのものから得たインスピレーションを音楽で表現したいというものでしたので、そういった作り方のクセみたいな部分が劇伴の作曲の時にも出ていたのかと思います。
textur3: バンド等の活動を拝見する限り、こうした実験的な側面がこれほどまで濃密に表に出てくることは少なかったように思います。ご自身の創作の中で、これらの要素を積極的に取り入れ、試行し始めたのはいつ頃からだったのでしょうか。
照井順政: 個人的にはハイスイノナサの時のアプローチの方が根本的な部分では断然実験的で前衛的だったと思っていますが、バンドという編成から解き放たれた曲が多くなったというところはあるのかもしれません。
textur3: 出自がギターリストの方が劇伴を作る際、無意識にギター的な発想に依拠してしまったり、ギタープレイヤーゆえの手癖のようなものがあるかと思います。それに対して照井さんはどういった考えをお持ち、また劇伴作家として、どういうふうに頭を切り替えたりしてきたのでしょうか。
照井順政: ハイスイノナサの時は楽器からの発想でアプローチすることはとても意識的に避けていました。ギタリストという意識もなく、表現したいイメージだけを大事にしていて、僕の場合はアウトプットする際に最も精度の高いものがギターだっただけで、発想が楽器には囚われたくないと思っていました。
今となってはその考えも随分と変わったのですが、元がそういう考え方なので、劇伴の際もギター中心に発送するということは基本的にはないです。
ただ求められる曲によってはいかにもなギターが必要な時もありますので、そういう時は敢えてギターらしさを考えます。
あとは劇伴は制作期間がタイトなことも多いので、どうしても厳しい時はギターでなんとかしてしまうということもあります、一番早くできるので。
堤博明 / 照井順政 / 桶狭間ありさ - 呪術廻戦
『呪術廻戦』第1期の劇伴制作
照井順政 / 蓮尾理之 - 機動戦士 Gundam GQuuuuuuX
照井順政: 劇場映画の劇伴では完成形に近い映像に合わせて作曲することが多いです。
TVアニメの時には音楽メニュー表という、曲目とコンセプトやリファレンスなどが記された表の指示に従って作曲する場合が多いです。
textur3: 朴性厚監督、御所園翔太監督、そして鶴巻和哉監督。これまでご一緒されてきたの中、音楽に対するリクエスト、視点の「最大の違い」は何だったと感じますか?
照井順政: 基本的に監督と直接やりとりする機会はそんなに多くはなく、それぞれ2~3回という感じで、普段は音楽Pやディレクターの方が間に入って制作を進めていく形でしたので、あくまで僕の感じたことにはなりますが…
朴監督は最も王道なエンタメ的なものを求めてらっしゃった気がします。
御所園監督は映画への愛を強く感じるのと、演出家出身の視点からくるリクエストが多いという感じがあります。
鶴巻監督は良い意味で一番オタクな感性のリクエストという感じがしました。
どの監督も方向性は違えど音楽にすごくこだわりのある方々だと思います。
textur3:『呪術廻戦』と『GQuuuuuuX』。不協和な質感と言いますか、どちらの作品も、ある種の「異質さ」を内包していると感じます。劇伴という手法を用いて、そのような異質さをどのように定義し、増幅させていったのでしょうか。
照井順政: 異質であることをそこまで強く意識しているわけではないのですが、どちらも作品として既に異質ですよね笑
当然その感じも拾っていきたいと考えているので、ある程度は自然とそうなるのかもしれません。
また、自分が劇伴作家としての自信が全然ないので、自信を持てる部分(バンド時代に培ったもの)を作品に持ち込まないと戦えないと考えているところがあるので、それが異質な感じにつながっているのかもしれません。
textur3: 作品自体にはどういった印象を持たれていたのでしょうか?第2期で単独担当となり、よりアグレッシブと言いますか、そういった表現が増えたように感じました。これは作品の展開によるものでしょうか、それとも監督からのリクエストがあったのでしょうか?
照井順政: 呪術廻戦という作品自体に持っていた印象は、芥見先生の持っている尖った感性を、過去の名作漫画の良いところを今の感覚でうまくエディットしたもので包み込んだような作品というものでした。
個人的には映画化もされた0や、懐玉・玉折編であったり、単行本8巻の小沢さんのエピソードなど、芥見先生の割と短くまとまったお話が特に好きなので、過去編は自分としても特に気分が乗っていた気がします。
アグレッシブということは意識していませんでしたが、2期を制作していく際に、制作サイドから大枠の方針を少し変えていきたいというお話をいただきまして。
ざっくり言うと少年誌のバトル漫画のアニメでよくある感じのヘヴィなロックであったり、そういったわかりやすい王道のものよりも少しカッティングエッジなものが欲しいというものだったので、そのつもりで制作していったということは影響していると思います。
textur3: 「懐玉・玉折」と「渋谷事変」という、空気感の全く異なる二つのエピソードを表現する上で、どのような作り分けを意識されましたか?
照井順政: 例えて言うなら懐玉・玉折の方は各曲の個性が立っているミニアルバム、渋谷事変は全体の流れや統一感を重視したフルアルバムみたいな意識でしょうか。
渋谷事変の方はかなり長くバトルが続いたり、後半は精神的にも重苦しい場面が続くので、雰囲気は保ちつつもあまりに暗くなりすぎたり一辺倒になり過ぎないようにバランスを意識しました。
textur3: 本作の主人公たちは、sora tob sakana の活動初期に近い年齢層ですね。彼女たちのような”思春期の少女”の共通性というものを感じることはありましたか?
照井順政: 全員個別の人間だしキャラクターなので、それぞれ違うという当たり前の実感になってしまいますね。
少女だからというわけではないと思いますが、若い分先天的に持っているその人の性分が強目に出ているので、それぞれ方向性は違えどある種の頑なさ、潔癖さを持っている子が多い傾向はあると思いました。
それこそ「”思春期の少女”の共通性」とか言われたら反発してくるような。
textur3: 「思春期」という不安定で繊細な時期を表現するために、好んで使う音色だったり、スタイルなどはありますか?
照井順政: 今の所ありきたりですがギターがキラキラしているバンドサウンドとか、ピアノだったりはやっぱり合うんだよなーと思ってしまって頼りがちです。
でもそこよりももっと深く踏み込んで、何がその曲をその曲たらしめるのかとしっかり向き合って選択していくようにしたいとは思っています。
照井順政 - 呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変
じゅじゅフェス
textur3: 劇伴制作において、最もプレッシャーを感じるのはどんな時ですか?また、制作のストレスはどうやって解消されますか?
照井順政: 常にプレッシャーは感じていますが、特別こういう時というのはあまりないです。強いていうなら作品の反響の大きさを見かけた時とか…
マッサージや整体を受けに行くのはよくあります。
あとは本当にヤバい時は甘いものを食べてしまうんですよね…これが辛い。
それと格闘ゲームが昔から好きなので、気分転換や眠気覚ましにプレイしたりもします。
納期に追われていると、読書や映画鑑賞などの長時間かかるインプットができなくなります。途中で「こんなことしてる場合ではないのではないか」とソワソワしてきて集中できないんですよね。
なので格闘ゲームは結構すぐに終われるのが良いです。
textur3: クリエイターの中には制作中にタバコをたくさん吸う方もいますが、照井さんはお吸いになったりしますか?もしそうでない場合、集中力を高めるためのルーティンなどはありますか?
照井順政: タバコは昔吸っていたこともありますが、かなり早い段階でやめました。
バンドの制作の時には自分の世界に深く入っていく感じだったので、より集中できる環境作りというか、特殊な照明を点けてみたりお香を焚いてみたりなどやってました。
最近は劇伴メインで長いマラソンという感じなので、一点において限界を超えて集中するというよりも、健康的に過ごすためのルーティンみたいなものを組んでいます。
運動や食事や音楽のインプット、音楽の勉強、楽器の練習、日々のログを付けたりなどです。
textur3: 現在はホームスタジオでの作業がメインでしょうか?
照井順政: 曲作りは自宅で、レコーディングは外部のスタジオですることが多いです。
textur3:「プラグインに関して、買うのが趣味」と仰っていましたが、最近購入したものは何でしょう?また、特にお気に入りのものや、逆に「買ったけれど使わなかった」ものが、もしあれば教えてください。
照井順政: 最近買ったのは Cableguysの「PanCake2」というオートパンや、polyverse の「comet」というリバーブなどです。
買って全く使っていないものはあまりないと思いますが、使いこなすのに時間がかかりそうなものは忙しい時は一旦放置していることも多いです。
締めくくり
・笠置シヅ子 - 買物ブギ
・寺尾紗穂 - しゅー・しゃいん
・yamasuki - yamayama
・折坂悠太 - さびしさ
・小田朋美 - 風が吹き風が吹き
・PaperBagLunchbox - スライド
・enie meenie - Until I Die
・AR - adam1009
・Diego Schissi Quinteto - Peiea82
・一柳慧 - Piano Media
最後に、textur3のインタビュー恒例なのですが、「照井さんが現在暮らしている街」をテーマに、10曲程度の“サウンドトラック”(Mixtape)を提示していただけると大変うれしく思います。
・笠置シヅ子 - 買物ブギ
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Produced & Japanese Editorial:Zing
Chinese Editorial:neciak
Design:10000
Photography:Courtesy of the Artist (Yoshimasa Terui)
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textur3 2024-2026