畠山地平 (Chihei Hatakeyama)

 




1. 響 (ひびき) [SOUND]

Q:2025 年、世界のノイズに塗りつぶされることなく、心に深く、静かに突き刺さった「音」。

A安島夕貴 / 『第一音源集』

アンビエントプロジェクトの 大山田大山脈 は知っていましたが、まさか本名名義のウタモノプロジェクトがあったとは知りませんでした。

最初にサブスクで発見したのは「オールディーズ」という曲で、ちょっとしゃがれた独特の声にまず注意がいきました。ロック好きだとすぐ伝わるような、でもJ-POP以前の「ニューミュージック」と言われていたような、90年代初期の歌謡曲のような……シティポップとは違う既視感にやられました。

中毒性がすごい。ぜひ多くの人に聴いてほしいなと思いました。





2. 景 (ひかり) [MOMENT]

Q:誰かと、あるいは自分自身と「繋がった」と感じた 2025 年のライブ光景。

A:2025年で一番良かったライブは フィッシュマンズ でした。

ボーカルの 佐藤伸治 は亡くなっているので、現実の音を脳内で変換して聴いていました。

バックの音楽はオリジナルメンバーなので、完璧にフィッシュマンズ。しかし何かが違う、その感じがかなり絶妙でした。

ただ、リズム隊の二人は完璧というか、むしろ上手くなっていて、すごかった。

会場は有明ガーデンで、天井が高いので、佐藤君の魂というか、言い方は変ですが幽霊が来ている感じ。

様々なボーカリストが参加していて皆素晴らしかったのですが、君島大空 の「baby blue」は尋常じゃなく良かった。音源化希望。

ライブとしては「LONG SEASON」が最高で、約40分の曲が現代版にアップデートされていて驚きました。




3. 航 (わたる) [FICTION]

Q:年間を通して、創作の糧、あるいはメンタリティ座標となった作品。

A:ミラン・クンデラ / 『不滅』

物語を読むというより、思考の残響を聴いている感覚の本でした。

登場人物や時間が少しずつ配置し直されていく感じがあって、まるで音のレイヤーを編集しているみたい。

派手な展開はないのに、読後に長く残る余韻がある。

音楽でいうと、メロディではなく「距離」や「気配」を作るタイプの作品。



4. 触 (ふれる) [MATTER]

Q:制作や日常生活に温かさを与えてくれて、身体の一部のように馴染んだ「モノ」。

A:アロマ、特に柑橘系とイランイラン系。

制作に入る前、いったん頭の中のノイズをリセットするために使っています。

音を作る前に空気を整える、という感じに近いかもしれません。

柑橘は思考を少し明るくしてくれて、輪郭がはっきりする。

イランイランは逆に、時間の流れをゆっくりにしてくれる感じがある。

その日の状態でどちらかを選ぶことが多いです。

2025年はスタジオでよくこの香りを使っていました。

とりあえず一回リセットしてから作業する、みたいな感じで。





5. 律 (リズム) [CONTINUITY]

Q:激しく動く時代の中で、変えずに続けてきた「自分だけの儀式」。

A:創作中にチョコレートとポテトチップスを食べること。

健康にはあまり良くない気もするけれど、甘みと塩分を少し入れないと頭が動かない感じがあります。あと紅茶。

それと、作業の合間に少しだけ歴史系かサッカー系のYouTubeを観て、感覚のバランスを取っています。

アンビエントの制作は、感覚的にかなり異世界に入っていく感じがあるので、一度外に出てから、また入り直すくらいの方がちょうどいい。











一年の余韻を胸に、私たちは2025年の足跡を振り返ります。本プロジェクト『Traces』には、国境や言語を越え、アジアを横断する音楽家とその歩みを支える共鳴者たち、総勢30名超が集結しました。

5つの漢字に託された、私たちが大切にしてきたもの。
個々の記憶に深く宿るぬくもりをアーカイブし、リスナーや読者へと届けていく。

The Artists:
、景、航、触、律」

The Pro-Voices:
「兆、韻、拓、伴、芯」

正解のない、不安な時代だからこそ。
この言葉たちが、小さくともしなやかな「可能性」の種となることを願って。
分断を越え、新しい時代の「輪郭」を、共に手繰り寄せるように。


Curation:Zing
Edit:neciak
Design:10000





畠山地平 Chihei Hatakeyama
東京を拠点に活動するサウンドアーティスト、音楽家。

Chihei Hatakeyamaとしてのソロ活動のほか、電子音楽ユニットOpitopeの一員、マスタリング・エンジニアとしても活躍。2013年からは自身のレーベル「White Paddy Mountain」を主宰するなど、その活動は多岐にわたる。

エレキギター、ヴィブラフォン、ピアノといった楽器の生演奏を録音し、それらを緻密に重ね合わせることで、聴き手の記憶を呼び起こすような色彩豊かなサウンドスケープを構築。その作品群は、Kranky、Room 40、Under the Spire、Hibernate Records、Magic Book Records、Home Normal、Own Records、そして(Opitopeとしては)Spekkなど、世界各国のレーベルから発表されており、国際的なアンビエント・シーンにおいて確固たる存在感を放っている。



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