成田光春
1. 兆 (きざし) [INSIGHT]
Q:「何かが変わる、新しい何かが始まる」を覚えた瞬間、ムーブメント、あるいは音楽作品。A:25.08.04 the cabs tour 2025 “再生の風景” @LIQUIDROOM
十三年前、3rd アルバム[再生の風景]を携えたリリースツアーは、未完のまま幕を閉じ、彼らは解散した。
2025年初頭に再結成を発表。かつてのアルバム名をそのまま冠したツアーが行われた。
「再生」という言葉が示す通り、あまりに出来すぎた筋書きだったが、そこにあったのは、ひとりのファンとしての私的な歓喜よりも、世界中の音楽リスナーが同時に熱狂するその規模と熱量への驚きだった。
彼らのSEは、当時と同じく haruka nakamura の Lang。
拍手をイントロダクションに含む、the cabsのSE としても象徴的なこの曲は、満員の会場に鳴り止まぬ拍手と歓声によって、かき消され続けた。
その光景は、2025 年を振り返るうえで、強く記憶に残っている。
2. 韻 (のこる) [ENERGY]
Q:熱量だったり一体感などに、心底圧倒された 2025 年の現場光景。A:これまで私が観てきた山下達郎のライブの中でも、というより、人生の記憶として確実に残るであろうライブだった。山の開放的な空間と澄んだ空気と匂い、日暮に差し掛かるマジックタイム。振り返ると、これまで人生で目にしたことのない規模のオーディエンスが広がっていた。イントロやセッションの流れから、次に演奏される曲がわかるほどにはライブを観てきたつもりだ。定番である「恋のブギウギトレイン」でのコーラス参加は想定内だったが念願だった「プラスティック・ラブ」をライブで聴けたこと、本人の歌唱で体験できたことには、強い興奮を覚えた。
フジロックという、日本を代表するインターナショナルなフェスの場(山下達郎は初出演!)で、全オーディエンスが自然と受け入れられるセットリスト、パフォーマンス、そしてそのクオリティに触れ、音楽の原体験としてのエンターテインメントの本質を垣間見たように感じた。
3. 拓 (ひらく) [PERSPECTIVE]
Q:年間を通して出会ったあらゆる表現の中で、視野を広げてくれたり、良き刺激もらったもの。A:プラネタリア / 佐藤 航陽 (著), 渡邉 賢一 (著)
年末に出会ったこの本書の趣旨とはずれてしまうのかもしれないが、人々は(自身も) 2000 年程度の歴史の中の物差しに、人間関係や社会、日々の生活の意味を計ろうとする。
その枠組みの中で悩み、衝突し、逃げ、生きる理由を言語化しようとしてきた。
そのなかで宇宙や環境というスケールを想像することでそうした自身や周囲の営みを見つめる視点が、静かにずれていった。
過剰に背負っていた意味や責任の視点が変わり、あらゆるものが腹落ちした。
それでも幾千の悩みは消えないままではある。それでも、それらを過度に恐れる必要はないのだと、そう理解できたことは本書の収穫であった。
4. 伴 (あいぼ) [TOOL]
Q:ハードな現場、日常、執筆など支えてくれたり、「一緒に戦ったな」と思う2025年の「相棒」。A:カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記 / 古舘 佑太郎 (著)
レーベルアーティストの日本国内外でのライブに帯同する機会が多く、出張の多い一年だった。
旅には旅日記を、という感覚で、長時間の移動の合間に知り合いの著書を少しずつ読み進めていた。
本書に描かれる、潔癖な彼にとっては過酷であるはずの旅の記録でありながら、その描写には、どこか羨ましさを覚える瞬間もあった。
自身もまた、慣れない土地へ向かう途中の非日常的なリズムの中に身を置きながら、本書は目的地へ向かう高揚感を静かに底上げし、旅や移動そのものの時間を、少しだけ豊かなものにしてくれる存在だった。
5. 芯 (どだい) [CONTINUITY]
Q:時代の激流の中で、これだけは守り抜いた「自分なりのルーティン」。A:日々の自分なりのルーティンと呼べるほどのものではないが、平日の出社日は、DOUTORで「アイスコーヒーのSサイズを持ち帰り用力ップで店内で」と注文し、それを店内で飲みながら、数分だけ腰を下ろす。
LINE やニュースを確認し、一本煙草を吸ってから出社する。
もしかすると、それがささいな切り替えのスイッチなのかもしれない。
一年の余韻を胸に、私たちは2025年の足跡を振り返ります。本プロジェクト『Traces』には、国境や言語を越え、アジアを横断する音楽家とその歩みを支える共鳴者たち、総勢30名超が集結しました。
5つの漢字に託された、私たちが大切にしてきたもの。
個々の記憶に深く宿るぬくもりをアーカイブし、リスナーや読者へと届けていく。
The Artists:
「響、景、航、触、律」
The Pro-Voices:
「兆、韻、拓、伴、芯」
正解のない、不安な時代だからこそ。
この言葉たちが、小さくともしなやかな「可能性」の種となることを願って。
分断を越え、新しい時代の「輪郭」を、共に手繰り寄せるように。
5つの漢字に託された、私たちが大切にしてきたもの。
個々の記憶に深く宿るぬくもりをアーカイブし、リスナーや読者へと届けていく。
The Artists:
「響、景、航、触、律」
The Pro-Voices:
「兆、韻、拓、伴、芯」
正解のない、不安な時代だからこそ。
この言葉たちが、小さくともしなやかな「可能性」の種となることを願って。
分断を越え、新しい時代の「輪郭」を、共に手繰り寄せるように。
Curation:Zing
Edit:neciak
Design:10000
Edit:neciak
Design:10000
パーフェクトミュージック チーフプロデューサー
textur3 2024-2026